e−漢方屋 くすりのたいせい最終更新日 8月28日
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 基本的な考え方
 西洋医学では、検査・診断にかなりの力を注ぎます。一病気一症状で、症状にはっきりした特徴があり、それがすぐに確認できれば鑑別診断は不要でしょう。しかし、病気の多くは実に多彩な症状をもち、同じ病気でも病期や体質によって全く異なる症状を示すのが現実です。逆に、違う病期なのに全く同じ症状が現れることも珍しくありません。
 そのため、西洋医学では様々な検査で鑑別を重ね、消去法で病名を追い詰めていきます。そして、病名が確定すれば治療内容もほぼ決まり、治療者の違いによる治療法の差は余りありません。 漢方では、病名より患者さんの証の見極めを重視します。それは、患者さんひとりひとりの体質や病態に個性があるからです。漢方処方が患者さんの体質や病態に合って初めて治療が成り立つと考えられるからです。
 これは体質や病態の特徴が証としてそれぞれの症例に現れることを見逃さず、証の変化に応じて対応をきめ細かく変えることを意味します。漢方が随証治療と呼ばれるのはこのためです。随証療法は、患者さんの体質や予備力、自覚症状以外の身体症状を細かく鑑定し、病態の変化に応じて細かくアレンジすることです。そのため、証が違えば、西洋医学的病名は同じであっても異なる処方になることがあります。
 証の鑑別
 証とは、患者さんの体質、病態の個性=特徴を表します。つまり、患者さんひとりひとりの全身状態、すなわち、患者さんの心と体の状態を全体的に表しているものです。そのため、体格が良いか悪いか、体力があるかないか、壮健な体質か虚弱な体質か、元気があるかないか、顔色がいいか悪いか、声に力があるかないか、太り気味か痩せ気味か、心がふさがれているか、開いているか、などを総合的な診ます。
 これだけの状態を正確に診るには、そのための物差しが必要です。漢方では、相対する事象の均衡や不均衡(乱れ)を診て、患者さんの状態を判断する手かがりとします。その物差しとなるのが陰陽、虚実、寒熱、表裏の概念です。さらに人の生命エネルギーやからだの働きをあらわす気、血、水、そして五臓、六腑と組み合わせ、病態の性質や原因を表現します。
 陰 陽
 非活動的で冷たい状態を陰、活動的で熱いものが陽です。陰か陽かのどちらか一方に傾くのは好ましくありません。バランスのとれた状態が良とされます。 陰陽は生体反応の性質を大づかみに表すもので、体質の特徴も陰陽で表されます。例えば、寒がり、顔色が青白く、手足が冷え、下痢気味であるなどの場合は陰証とされます。一方、暑がり、顔色が赤く、冷水をよく飲む、脈が速いなどの特徴は陽証とされます。また、陰陽は病気の進行程度(病期)と体力との関係も示します。病気によって新陳代謝が高まっている状態が陽、病気が進んで体力が低下し、新陳代謝が落ちた状態が陰です。陰証になると、顔色が悪くなり、冷えの症状が体のあちこちに出現します。
 まとめてみると、陰証、陽証というのは、急性の病気の進行状態、新陳代謝の状態、病気の勢いを示すものということになります。陰と陽はさらに細かく、太陽、陽明、小陽、大陰、小陰、厥陰の6つの病気に分けて使われることもあります。ほとんどの病気はこのように段階的に進行するのが基本ですが、例外も少なくありません。医師はどの病期に当たるかを仔細に観察し、診断の手がかりとするのです。
 虚 実
 虚実は体力の有無、抵抗力の強弱を示す言葉です。虚証は体力がなく、生理機能が衰え、抵抗力も低下した状態を意味します。外見的には、やせていて顔色が悪く、肌も荒れているか、乾いていて、つやがありません。さらに、声が小さく不明瞭、胃腸が弱い、疲れやすい、腹壁がやわらかいなどの特徴もみられます。
 実証は生理機能が高まった状態を意味します。外見的には、体力があり、筋肉質で体格も良く、血色が良く、食欲もあります。さらに、声が大きく明瞭、胃腸が強く便秘がち、腹壁に弾力があるなどの特徴があります。このように書くと、実証を示す人は体力が有り余って健康そのもののようにみえますが、そうではありません。何らかの健康問題を抱えているわりに、体力や抵抗力科の予備力が大きいという意味です。
 なお、虚証または実証のどちらかに偏らず、それぞれの特徴を半分ずつもの場合は中間証、または虚実間証と呼ばれます。証は常に一定ではなく、体の状態や病気の進行具合によって変化します。慢性疾患を抱えている人の場合は、特に虚と実のバランスが変わったり、戻ったりすることがよくみられます。
 漢方の処方も証に応じて変わられます。ですから、漫然と同じ薬を飲み続けるのは間違いです。体調の変化を自覚した場合は、受診して証の変化をチェックしてもらい、必要ならば処方を変えてもらわなければなりません。
 陰陽と虚実
 陰陽と虚実は、証を見る上で、よく使われる指標といえます。暑がりなのか(陽)、寒がりなのか(陰)、また体力があるのか(実)、体力が無いのか(虚)を組み合わせると、大まかな振り分けができます。こうした症状を解消するように、それぞれの中間へ向かうような漢方処方が選ばれるのです。



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